小布施のジャズ喫茶 BUD

♪日々好音の穀蔵空間で薫り高い神戸萩原の炭火焙煎コーヒーを♪

2018年03月

音を聴く「モーツァルト」その2

音は人なりなので、音楽に相性はあって当然です。
ですから、同じ曲でもできるだけ意に添ったものを聴きたいと思っています。
趣味は我が儘な選り好みがあってこそ個性が出て面白いのです。
人はどうのたまわろうとも「今の」自分の感性を信じましょう。
例えばアイネ・クライネ・ナハトモジー ク、ポピュラーな曲ですが、
明るく軽めの演奏より、芸術作品として腰の据わった演奏が好きです。
それに自分の感性が絶対永遠なんてことはないのですから。
感性が変わっていくことは成長なんです、決して変節なんかじゃありません。
大げさに言えば、感性や品性といった人格的能力は一生勉強することで、
少しずつマシになっていくと考えたいですね。

さて、今日は弦楽四重奏です。
モーツァルトは弦楽四重奏を23曲作りましたが、
14番から19番 の6曲はハイドンに献呈され、
ハイドンセットとしてよく知られています。
敬愛と親愛の友情で結ばれていたハイドンへ、
モーツァルトは出版譜の序文に書きました。以下主旨。
「親愛な友ハイドンへ
ここに六人の子がいます。これらは長い間の苦労の所産ですが、
この苦労がいつか報われるであろうという希望を持つことが、
私の慰めの泉となろうかと思っています。どうぞ快くこれらをお受け取りになり、
父とも指導者とも友人ともなってやってください。
只今をもって、私が彼らの上に持っていた権利のすべてをお譲りします。
1785月9月1日 ウィーンにて」 29歳、死の6年前。

モーツァルトはふだん、噴出する泉が小川となるように曲を書いていましたが、
この弦楽四重奏の作曲には苦労したようで、自筆譜には考えられないほどの、
修正の跡が見て取れます 。
ともあれ、この六曲は全て素晴らしく、深い味わいがあります。
それは、秋の夕日に照らされた紅葉の山が複雑な織り地を見せるように、
モーツァルトの音楽は秋の微光に渋く光り響いています。
「秋の日射しといっても、ことばを聞いてわかるというが、それで内容まで
ちゃんとわかるということはない。それは自分が本当に秋の日射しの深さが
わかるようにならなければ、ことばで言ってもわかりはしない。
してみるとほんとうにわかるのは簡単なことではない。」
この岡潔さんの言葉にあるように、モーツァルトが放つ秋の日射し、
その深さは簡単にわかるというものではないように思います。

六人の子を差別できませんが、 代表して一人に出てもらいましょう。
19番ハ長調K.465「不協和音」
天才としての強烈な自負と自惚れが生んだ封建貴族社会との軋轢。
生身のモーツァルトが受けたであろう悲哀は、
音楽によって澄みきったものへと昇華します。

神韻縹渺としたカペーの演奏は、モーツァルトの霊が、
一緒に聴いているような雰囲気があります。
かたや、ジュリアード はバランスよく調和がとれていて、
柔軟な響きに落ち着いた安定感のある演奏を聴かせてくれます。

モーツァルト没後に活躍したイタリア人作曲家の二人 が
モーツァルトについて語った言葉です。
ヴェルディ:モーツァルトは弦楽四重奏の作曲家。
ロッシーニ:モーツァルトは唯一無二の作曲家。

モーツァルト
(1756年1月27日 - 1791年12月5日)
ヴェルディ(
1813年10月10日 - 1901年1月27日)
ロッシーニ 1792年2月29日 - 1868年11月13日)

音を聴く「モーツァルト」その1

人生は出会いと言いますが、晩年に近づき、
モーツァルトに出会えたというのは僥倖というほかありません。
一言で言えば、それは心浄い青春です。
モーツァルトの音楽を聴けば感じると思いますが、
その底に流れているのは、過去から語りかけてくる軽やかな透明感です。
自然に身を任して解放され、ストレスのない世界にいるようです。
そういう世界を音で紡ぎ表現したモーツァルトの音楽は、
感情によって振り回されない美の世界へ誘ってくれます。
そんなモーツァルトを感じる演奏との出会いは楽しいもとなっています。

今日聴いたのは、モーツァルト29歳(1785年)の作品
K.466ピアノ協奏曲20番ニ短調
ピアノ スヴァトスラフ・リヒテル
オーケストラ 
ワルシャワ国立フィルハーモニー
指揮 スタニスラフ ヴィスロツキ
大変落ち着いたピアノの響きが印象的です。

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音を聴く「ブルースを聴く」チャーリー・パットン

チャーリー・パットンのしわがれた歌声に、人はグイッと引きつけられる。
酔った呂律はなんとも酒臭いが、のど奥からの響きは太く力強い。
叫ぶような歌い方は荒々しく泥クサイが、
プリミティヴさゆえに聴くものの心を鷲掴みにする。

ブルースはアメリカに連れ去られて来た黒人音楽の源流。
このことをマイルス・デヴィスは端的に語っている。
(ジャズはブルースの伝統の上にあるから)
オレはいつもブルースを演奏している、と。
これは、ブルースとは何よりも心の状態なんだよ、
そうマイルスは言いたかったんですね。


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