古い(50年ぐらい前のもの)真空管アンプは修理したからといって完璧な状態とは限らない。輸送中の振動や梱包を解いたときのちょっとした衝撃だとか、傾きによって真空管やハンダが浮いたりする。そうすると音が出なかったり雑音が出たりする。接続していざ音を出してみる段になってそういう症状になると、なにせ僕は素人だから原因がわからないまま途方に暮れる。それでも修理した人に電話で状況を説明し、処置の指示を仰いでその通りやってみる。それがダメなら次の一手を聞く。それやこれやでとても一筋縄ではいかない。それでも僕は真空管アンプの音が好きだから使いたい。というのもQUADのトランジスタ・アンプは、音が出た瞬間硬い音だと感じて、使うのを諦めてしまった。こういう瞬時の反応は、物理特性がいいから音質がいいというデータの問題ではなく、耳にした音味が聞き慣れたものより不味かったという正直な直感の事実です。いずれにしてもQUADは期待していたのでちょっと残念な気持ちですが、やっぱり僕の好みは真空管だなあというところに落ち着きました。今回と同じ経験を以前にもしたことがあります。その時はマッキントッシュのC-29プリとMC2500パワーアンプの組み合わせでした。パワーと解像力は素晴らしかったのですが、そうも隅々までクッキリハッキリ音が出てくると耳が再現される情報量に付いていかれず疲れてしまいました。それにトランジスタ・アンプの硬さもありましたね。趣味のレコード再生は音楽を楽しむものですから、ディスクに入っている音を正確に確認するようなモニター・アンプやスピーカーはいらないような気がします。オーディオの要諦と極意は抜けのいい音を再生することですが、これは極めて難しいことです。その点(FISHER/X-101-C)とスコット(SCOTT/299-C STEREO MASTER)は程ほどをわきまえたアンプといえるのではないでしょうか。
フィッシャー(FISHER/X-101-C)下とスコット(SCOTT/299-C STEREO MASTER)
クワド(QUAD/44GY+405-2)