昨夜、長野のグルービーで大西順子トリオを聴く。彼女を聴くのはいずれもグルービーのライブでこれで3回目になる。入ってきた彼女の表情は相変わらず少し硬く素っ気ない。ピアノに近づき傍らのマイクでごく手短な挨拶とメンバーの紹介を済ますと、早速これが本当の自己紹介というように演奏が始まった。彼女らしい力強いタッチでアップテンポの新曲のNO.16は、彼女の魅力がつまった素晴らしいプレイだった。僕が座ったのは4メートル向こうに彼女の顔が正面に見える席。ライブが進むにつれ、どの曲も無表情に弾くその顔がどこかさみしげで気になった。どんな想いで弾いているのか、それがいつ顔に表れるのか、彼女の顔をじっと見つめながら聴いていたけど、心の内が現れることはなかった。しかしようやく終わりに近く、自作の「ハウ・ロング・ハズ・ジス・ビーン・ゴーイン・オン 」 で熱のこもったプレイに肌が赤く染まってきたときにこぼれた笑みは、村雲にさえぎられた月が一瞬見せた光のようだった。そしてこのプレイに僕は心から喝采と拍手を送った。