曽我さんがソガフォンを取り付けに来られた。
ソガフォンはUチューブに多数の投稿があって、
その内容と音が聞けるということは知っていたが、
今日まで敢えて見ず聞かずにおいた。
何しろ本人がおいでになるのだから予見予断は控えて、
驚くならアッとオドロイテみたかった。
百聞は一見にしかずだし、百見は一聞にしかずを体験しようと待ち望んだ。
そして聴いてみると、そういうことが実際起こった。
あたかもそこに演奏家が立ち現れたようにきこえる。
HMV102はソガフォンからの音を楽器として鳴らしたのだ。
大変豊かなニュアンスを再現する秘密は音道の構造と材質。
ヴァイオリンの音が出てくる箱をじっと見つめていると、
箱はまさしくヴァイオリンそのもののように思えてくる。

1920~30年代のSP音源をCDにした音がソガフォンを経由し
HMVから出てくると、CDの音ではなくSPの音になって出てくる。
しかも単にSPの古めかしい音ではなく、今そこで演奏している
現代の演奏音として蘇ってきこえる。
演奏者が過去からやってくるのか、
聴いてるものが過去へ遡るのか、
刻を超えて奏者と聴者が一体になる。

HMV102の製造は1931年~1958年。
蓄音機のベストセラーであり名器として今なお愛し続けられている。
面白いことに'40年代以降の新しい録音のSPよりも、
古い録音のSPのほうが生々しく鳴る。
このことは、オーディオのハイファイとは何かを示唆しているように思う。
つまり、ハイファイとはレコードやCDに入っている音源の忠実再生なのだが、
その時代の録音はその時代の装置が最も忠実に再現するということを、
このHMV102は如実に物語っている。
SP原盤ではなく、復刻したCDでSPの忠実度(ハイファイ)再生ができるソガフォンは、
新しく音楽の楽しみ方を切り開いて見せた画期的な製品として、
音楽ファンになによりもの贈り物です。