ポートレイト・イン・ジャズ
イラスト 和田誠  文 村上春樹

ほのぼのとした似顔絵のイラストから、ジャズを愛し楽しんでいる和田誠さんの気持ちが伝わってきます。始めに26人、続に26人、合わせて52人。あとがきに『人選はまったく自分の好みに従っている。この場合の「好み」には二種類あって、一つは演奏(あるいは歌唱)を聴いて好きになれる人。一つは描いて楽しく、面白い絵になりそうな人。―中略―絵が完成するまでに、その人のレコードをかけている。写真を見るだけではなかなか描けない。顔を似せることはできても、それ以上の何かを求めようとすると、音楽の助けが必要となる』ナルホド、似顔絵に魂を入れるには音楽が不可欠だったんですね。僕が好きな似顔絵は、チェット・ベイカーとチャーリー・パーカー。二人とも度し難いジャンキー。チェットは目の隈に、パーカーは顔半分にそのことをちゃんと描き入れてる。村上さんの罪のない(?)饒舌、それらしい言葉を置いたような文章は、反復すると陳腐さが後を引く。ビリー・ホリデイのところでこんなことを書いている。『ビリー・ホリデイの晩年の歌を聴いていると、僕が生きることをとおして、あるいは書くことをとおして、これまでおかしてきた数多くの過ちや、これまでに傷つけてきた数多くの人々の心を、彼女がそっくりと静に引き受けて、それをぜんぶひっくるめて赦してくれているような気が、僕にはするのだ。もういいから忘れなさいと』ウーン、なんといえばいいのか。

img004

img005