ジャズというのは、同じレコードでも聴く度に違った思いを抱く(感じ方をする)不思議な音楽です。というのもポップスなど譜面のあるものは一度聴けば同じ節が二度三度とくり返されるので自然とメロディを憶えてしまいます。それに反してジャズは譜面通りに演奏しないか譜面なしで演奏するからだと思います。なぜそうやって演奏するかというと、それがジャズだからです。譜面がない演奏は一体この人何やってるの、これでも音楽なの、全然分からない。といった印象が強いのは確かなことです。また譜面によらずジャズを演奏したプレーヤーが、それがどんなに素晴らしい演奏でも、再び全く同じように演奏したら、それは素晴らしい演奏・ジャズとはいわれないのです。なぜかというと、それがジャズという音楽の本質に外ならないからです。ジャズにとっての譜面は演奏それ自体なのです。ですからコピー(譜面)通りの演奏はジャズとはいわれないのです。それはあたかもジャクソン・ポロックのペインティングが、これも絵なの、何を描いてるのか分からないわ。というのに非常に似ています。両者に共通なのは衝動性・イマジネーションによる即興創造行為がもたらした表現が美(アート)に昇華しているということです。正にコピーとは無縁の行為です。ところでジャズを聴くというけれど、演奏者でない僕にはジャズは感じるといった方が当たっているように思っています。面白い(良い)とか面白くない(良くない)とかを理由もなくね。