~近江散歩から~
昭和30年代から急速に膨張した土木人口が、政府・自治体の予算を餌にして、ときに飢え、ときに血膨れし、国土のなかを猛獣のように彷徨している。政治家の票にむすびついては、無用のダムや埋立地や橋梁などをつくってきたが、近江にかぎっていえば生命の源泉というべき琵琶湖をねらうところまできているらしい。猛獣は家畜として訓致しなければならない。こまるのは、どのように飼いならすかということについて、政党も新聞も、あるいは学者や思想家たちも訓致のための原理と方法をつかんでいないことである。土木人口や土木学が悪なのではなく、この国と社会における棲み方の思想が掴まれていないことが、悪といえるのではないか。