ジャッキー・マックリーンのアルトサックスは、
ひたすら前向きに吹く姿勢が外連味ない。
さりとて、さびた細かい鉄粉を練り込んだようなサウンド
からくり出すバラードも渋く哀愁があって良い。


あ、そうだ。ジャズとはそもそも何だ、どういう音楽なのか。
ジャズは20世紀にアメリカで生まれた新しい音楽。
それがどういう発展をしてきたのか、その歴史は100余年。
一口に言えば、ジャズは自由を目指す音楽。
その特徴は即興演奏を何よりの身上とする。

近代の強欲が自由はおろか黒人としての人間を否定した奴隷制度。
このブラックホールからジャズという宇宙が生まれた。
アフリカの文化がヨーロッパの文化と出会いアメリカで過ごした300年、
その文化の融合がジャズを生む母体となった。
あらゆる音楽がジャズという目に見えぬ河に流れ込み大河になった。
いってみれば、アフリカの土着とヨーロッパの知性がジャズを芸術にした。

さて、マックリーン。
長いキャリアの中でもぼくが忘れがたいのは1952年、
マイルス・デヴィス・オールスターズに参加した初期の演奏中、
短くも芳しいマックリーンサウンドを刻んでいる『
Dear Old Stockholm』。
その後はハードバッパーとして次々にレコーディング、
50年代はプレスティッジ、ニュー・ジャズを中心に駆け抜け、
60年代はブルーノートに多くの作品を残していく。
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そんな中からやはり初期の一枚
The New Tradition 』1955年
音色とイマジネーションとフレージングが一体となった、
気持ちのいいフレッシュなマックリーンサウンドの演奏が聴けます。
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