レコードを収集し始めてかれこれ50年以上、
CDの時代になっても、いまだにぼつぼつと買っているのは、
レコードで聴く音楽が楽しいからに他なりません。

「なんだって、あんなに沢山、気ちがいみたいにレコードを集めるんだ」
なんのために?ときかれると、答は簡単明瞭である。
この耳で、よい音楽をききたいためだったのである。
こう答えたのは「あらえびす」野村胡堂。
その「あらえびす」さんの枚数にして1万数千には及ぶべきもないが、
ジャズにクラシックにと聴きたいものは懐がゆるす限り集めてきた。

1960年代後半、レコード収集を始めた頃、買うべきレコードは、
スウィングジャーナルや粟村政昭さん由井正一さんの本で目星をつけていた。
当時は手放す人も多かったが買う人も沢山いて、
中古レコード店に行くと、いつも何枚か欲しいものが見つかった。
またにしようと見送れば悔やむことになるので、
由井さんの金言にならい「収集のコツは見つけたらそのとき買う!」
という方針はいつも懐具合との相談だった。

その内やっかいな問題に直面した。
一つはレコードを再生する装置のグレード。
これで音楽の表情が違うから、
より表情豊かに鳴る装置が欲しいと思うようになる。
もう一つはレコード盤の音質。
これは音の鮮度に関わるから、
装置以上に音楽の印象を左右するので重要だと気がついたこと。
この二つはお金がかかる。
妥協しないと音楽より音が気になり本末転倒しかねない。
そこで大事なのは、感性と想像力に訴えて音楽を豊かにし、
装置と盤質グレードアップの音を追求する即物的な聴き方をしないことだと思う。

こんなことを書いたのは、昨日の日経に綾部徹之進という方が、
「ロシア盤 名演奏の宝庫」と題した記事を読んでのことがきっかけです。
ヴァイオリンのユリアン・シトコヴェッキー、
ピアニストのゴリデンヴィエイゼル、フェインベルクといった演奏家による
ロシアのクラシック音楽に魅了され、20年間になんと1万枚以上を収集。
しかも、より音質の優れたオリジナル盤を求めて、
同じ音源でもプレスの違うものの中で、
どれがオリジナル盤かをロシアの事業者に問い合わせる徹底ぶり。
念願は、ロシア盤を聴き比べられる資料館を作ることであるという。

実は僕もメロディア盤の愛好家なので(といっても300枚ほどの収集)、
記事を読んでうれしく思い共感しました。
前記の演奏家をはじめ、ソフロニツキーやタチアナ・ニコラーエワは特に好きです。
演奏の素晴らしさに加え、初期オリジナル盤音質の、
ストイックなほどすっきりと抜けがよいのは特筆すべきことだと思います。

人はよい音楽に限らず、よいもの(感動)を求めている。

IMG_2364

IMG_2367

IMG_2365

IMG_2369

IMG_2366

IMG_2370