~アーティストがよき音で演奏する よき曲を よき録音で よき再生音で~

クラシック音楽の古典を紹介・解説した古典的名著、
「あらえびす」こと野村胡堂の『名曲決定盤』1939年(昭和14年)。
今もって、この書を凌駕する案内書は出てこない。
ここに選ばれた、よき曲・よき演奏・よき録音の音楽を聴いてみたい。

そう思ったのは、巻頭言に「音楽を愛するが故に、私はレコードを集めた。
それは、見栄でも道楽でも、思惑でも競争でもなかった。
未知の音楽を一つ一つ聴くことが、私にとっては、
新しい世界の一つ一つの発見であった。」
とあり、それは僕も同じ想いで音楽を聴いてきたからだった。
あらえびすはクラシック音楽機関車。
内に音楽をくべ、煙を吐いて感動の汽笛を鳴らしています。

そして何よりも、ここには音楽のエッセンスがあるからです。
生命感あふれる瑞々しい音楽が紹介されているからです。
脈々と波打つ長い時間をかけた熱い感動が記録されているからです。
だから今、たんなる懐古趣味で聴いているのではないのです。
むしろ今、新しく鮮やかなのです。
人の心を感動させる芸術に古さは関係ありませんものね。

あらえびすが聴いたSPレコードと蓄音機の音を追体験するのは、
蒸気機関車を走らせるように、なかなか容易ではありません。
ですから仕方なく、というより積極的にLPレコードやCDで、
再現された音を聴き「音楽の芸術性」を追体験してみたいと考えています。

さて、よき録音はよい音ですが、それは必ずしもよき演奏とはかぎりません。
古く雑音があるよき録音ではなくても、よき演奏が伝わってくるものあります。

よき曲、よき演奏・アーティストについては、
以下「あらえびす」が述べていることに尽きます。
その集約が『名曲決定盤』なのです。

『私は努めて音楽愛を語り、レコード愛を語る。議論や理屈は極力避けたつもりだ。
私は経験を土台にして書き進んだ。従って、一、二回聴いて飽きるレコードは斥けて、
十回、百回聴いてあくことを知らないレコードを挙げるようにした。』

『人の好みや興味は程度問題で、大衆の叡智と興味には、
北斗を指す磁石のごときものがあり、世の中にはおのずから定まる声価がある。』

『やかましくせんさくすると、三拍子揃ったレコードというものは案外少ない。
幾千枚のレコードのうちから、真に三拍子揃ったレコードを、30枚50枚なり選択して、
日常の慰安にするのは、一般の好楽者にとって良いことだと思う。』

それでは、ボツボツ宝探しに参るとしましょうか。